税務調査で問題になりやすい論点② ~名義預金~
「名義預金」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
名義預金とは、自分以外(ここでは仮に配偶者とします)の預金口座であってもその口座に入っているお金は自分の口座などから移しているものであり、口座管理なども自分が行っている場合におけるその預金を指します。
配偶者の預金通帳であるため形式上は配偶者のものですが、実態は自分の預貯金と同一であるため自分の財産として相続税の申告対象となります。
ここで問題になりやすい論点が、「名義預金」なのか「配偶者へ贈与をした預金」なのかという点です。
配偶者は贈与を受けた認識があり、贈与税の申告も行い、さらには配偶者が自分でその預貯金を自由に使っている場合は「贈与」があったものと認定される可能性が高いです。
逆に、配偶者自身が贈与を受けた認識がなく、そのため贈与税の申告も行っていない場合は「名義預金」と認定される可能性が高いでしょう。
ただ、実際はこのように明確には判断できないケースが多々あります。
例えば下記のケースはどちらに該当するでしょうか?
①贈与税の申告はしていないが、贈与を受けたものだと配偶者が認識している場合。
②贈与契約書を交わしたうえで配偶者の口座に金銭が振り込まれているが、その口座を配偶者が管理していない場合。
③配偶者は毎月多額の生活費を受け取っていたが、それをあまり使わないで自分の口座で貯めていた場合。
このようにどちらとも取れるケースが実際には多々ありますので、その背景などを確認し、何が正しいのかという税務上の判断をしなければならないこともあります。
これらの背景はそれぞれ異なりますので、単純に「○○だから贈与」とか「○○だから名義預金」と位置付けるのは困難ですが、一つの目安として下記がどのようになっているのかを確認するようにしております。
■そもそも贈与が成立しているか。
預貯金をあげた側である贈与者は「財産をあげた」という明確な意思があったとしても、預貯金を受け取った側である受贈者が「財産をもらった」という認識がなければ贈与自体成立していない可能性があります。
■贈与契約書があるか。
「契約書があるから必ず贈与になる」という訳ではありませんが、贈与が成立しているかどうかの客観的な判断材料になります。
■贈与税の申告を行っているか
基礎控除額である110万円以下であれば贈与税の申告は不要ですが、それ以上の金額の場合は贈与を受けた側は贈与税の申告をする義務があります。
■通帳や印鑑は誰が保管・管理していたか
受贈者(財産をもらった人)が管理していつでも自由に使える状況であれば贈与が成立している可能性が高まりますが、贈与者(財産をあげた人)が管理しているのであれば財産の処分権は贈与者のままになっているので贈与は成立していない可能性が高まります。
名義預金という判断になったときは相続税の申告時には被相続人の財産として申告する必要があり、贈与という判断になったときで贈与税の申告をしていなかった場合は贈与税の期限後申告の問題が出てきます。
過年度の贈与の場合には時効の問題も絡んできますので、様々な角度から検証して慎重に判断する必要があります。
また、名義預金であれば遺産分割の対象になりますが、贈与された財産であれば受贈者(財産をもらった人)の固有の財産となるので遺産分割の対象にはなりません。贈与者が亡くなった後に立証するのは困難なことも多いので、遺産分割のトラブルを避ける意味でも可能であれば生前のうちに証拠を残して明確にしておくのが良いですね。
札幌市を含む北海道エリアで相続税に関するご相談はFUJITA税理士法人までお気軽にお問い合わせください。
執筆者:税理士 佐藤友一