相続対策としての家族信託とは

相続対策として家族信託が注目され始めています。家族信託は、個人が委託者として、その保有財産を信託し、受益者である自分または家族のために、財産の管理・運用・処分をしてもらう信託、をいうのですが、その行為自体よりもそれによるメリット、例えば信託契約を結んでいれば認知症になった後も相続対策を実施することができる、等の内容を知っていただければと思います。

この記事を読んでわかること

相続対策として注目され始めている家族信託の具体例とそのメリット・デメリットを知ることができます。これを知っていれば相続対策のバリエーションを増やすことも可能です。

なぜ必要なのか?

家族信託の契約をしていなければ、認知症になった場合、その後相続対策を行うことは全くできません。仮に認知症以前にしていた口約束(例えば孫の結婚式の費用を出す、など)があった場合でも、基本的には実行できなくなります。

メリット・デメリット

<家族信託のメリット>
①認知症になっても相続対策ができる
厚生労働省の平成25年資料によると65歳以上の28%が認知症又は認知症の疑いがあるとされています。認知症となった場合、資産は凍結され、自由に管理・運用することはできなくなります。成年後見制度を利用した場合でも、後見人は被後見人の不利益になる恐れがある行為は基本的に行えないため、相続対策を行うことは極めて難しくなります。これに対し、認知症となる以前に信託契約を結んでいれば、仮に認知症となったとしてもその契約の範囲内で自由に相続対策を継続することができます。
※認知症と診断された後では信託契約を結ぶことができないため、注意が必要です。

②後見制度よりも柔軟な財産管理が可能
例えば、受益者を委託者、受託者をその親族とすることで不動産の管理・処分を受託者に贈与せずに親族に任せることができます。また、信託財産については相続発生時に資産凍結されません。

③通常の遺言では不可能な2次相続以降の資産承継先の指定ができる
遺言では2次相続以降の財産承継を定めることはできませんが、信託では一定期間の後継ぎ遺贈が可能となります。前妻及び後妻の間に子がいるなど、相続が複雑な場合に、自分の思い通りの財産承継を行うことで相続争いを予防する効果が期待されます。

④不動産・非上場株式の共有問題の回避
受託者を指定することにより資産の塩漬けを防止する効果が期待されます。



<家族信託のデメリット>
・信託不動産の損失は損益通算・損失繰越ができない
信託不動産の損失は通常の不動産所得とは異なり、他の所得と損益通算ができません。また、翌年以降に損失を繰り越すこともできないため、本当に不動産を信託するのがベターなのか、税務の専門家と話し合う必要があります。(租税特別措置法41条の四の二参照)
・税務申告の手間が増える
信託財産において不動産所得がある場合、不動産所得用の明細書のほかに信託財産に関する明細書を作成しなければなりません。元々税理士に確定申告書を作成依頼している場合には関係ありませんが、個人で申告している場合は要注意となります。

家族信託は実務に精通した専門家が少ない、新しい手段となっています。また、家族信託は長期間において利害関係者を拘束する効果を持ちます。何らかの目的で家族信託を検討される際も、それ以外に手段がないか等も含め、包括的に検討することが必要となるため、何かしらの対策を練る際には専門家にご相談されることをお勧めいたします。


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