相続財産に貸付金があった場合

他人にお金を貸したまま亡くなってしまった場合、その貸付金は相続人が相続財産として引き継ぐことになります。もちろん遺産分割協議の対象にもなりますし、その貸付金債権を引き継いだ人は借主に請求をして回収することが可能となります。ただし、金銭の貸し借りにはトラブルがつきものですし、その金銭を確実に回収できるという保証はありません。信用していたがために契約書を交わさずに貸していた人もいるでしょう。相続財産に貸付金があった場合、それはどのように評価をして申告すべきなのでしょうか。

単純に言うと、貸し付けている金額と相続開始現在でまだ受け取っていない既経過利息の額によって評価を行います。ただしこのように割り切れるものばかりではないケースも多々あります。例えば次のようなケースであればどのように評価を行えばよいか悩むところではあります。
(例1)借主から「そんなお金は借りていない」とか「既に返している」と言われた
(例2)借主が行方不明
(例3)貸付金の額が1億円であり、借主の資力をもってしても回収の見込みがない

税務当局において、貸付金の全部又は一部について①一定の事由が生じているとき又は②回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときはその金額を相続財産として評価しなくても良い旨の通達を出していて、その①一定の事由として例えば下記のような例をあげています。
・借主において破産手続き開始の決定があったとき
・債権者集会の協議により債権の切捨て等があった場合の一定額

実務上は①のように明確なケースは少なく、むしろ②の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときに当てはまらないかを検討することの方が多いイメージがあります。
納税者と税務当局において見解が異なる場合、それは国税不服審判所の判断を仰ぐところまでもつれることがありますが、過去の裁決において納税者の主張が認められて貸付金の評価を零と認められたケースを紹介します。

■裁決の要旨

・貸付金債権に係る債務者に返済能力が認められないため、その評価額は0円と認められた。
・債務者は被相続人からの借入があることは認めている。
・借主の不動産や預金の保有状況からみると著しい債務超過の状態にあるため借入金を返済するための資金調達も極めて困難であると見込まれる。
・国税不服審判所が調査した結果によっても借主に返済能力があると判断することは困難である。

貸付金については債務者の財務状況も加味する余地がありますし、また、貸した金銭を一度も請求することがなく時間が経過している場合は時効を向かえてしまっている可能性もあります。確実に返金されるのであれば良いですが、回収の見込みがない可能性がある場合は単純に額面ではなくできる限りの現況調査を行ったうえで評価を行うことが肝心です。

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